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法改正による同一労働同一賃金について解説|メリットや導入時の注意点

その他 更新日:2023.02.27
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法改正による同一労働同一賃金について解説|メリットや導入時の注意点

同一労働同一賃金とは

「同一労働同一賃金」とは、正規雇用労働者、非正規労働者に関係なく、「同じ作業・業務であれば、同じ報酬を支払うべき」という考え方です。

正規社員と非正規社員の待遇差を解消することで、個人がさまざまな働き方を選択できることを目的としています。

この制度は、国際労働機関が提唱する「同一価値の労働は、同一の賃金が支払われるべき」という考えをもとに作成されました。

同一労働同一賃金が導入される理由

現在の日本は、人口減少により労働力が低下しています。フルタイムの正規社員だけでは足りない労働力を確保するためには、非正規の人が働きやすい環境を整えることが必須です。

しかし、欧米諸国と比較してみると、日本の正規社員と非正規社員の待遇の格差は大きく、非正規社員にとって決して働きやすい環境とは言えません。

このような背景から、非正規社員の待遇を改善し、労働力を増やす目的で「同一労働同一賃金」が導入されました。

同一労働同一賃金と法改正

同一労働同一賃金の施行に伴い、パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法が改正されました。

パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法は、同一労働同一賃金を導入する際に理解しておく必要がある法律です。

ここでは、パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法とはどのような法律なのかを見ていきましょう。

出典:パートタイム・有期雇用労働法周知リーフレット|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/000473038.pdf

パートタイム・有期雇用労働法について

パートタイム・有期雇用労働法は、不合理な待遇の格差をなくし、誰もが納得して働くための法律です。

大企業では2020年4月から、中小企業でも2021年4月からこの法律が適用されており、「合理的でない待遇差の禁止」「労働者の待遇に対して説明義務を強化」「行政から事業主へ指導・助言の整備」「裁判をせずに事業主と労働者の問題を解決する」といった項目が定められています。

出典:パートタイム・有期雇用労働法周知リーフレット 20190121|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/000473038.pdf

労働者派遣法について

労働者派遣法の基本的な考えは、正規労働者と派遣労働者の不合理な待遇の格差を解消することです。

これは、フルタイム労働者に比べて待遇が悪く、賃金が不安定である派遣労働者を守るための法律です。

この労働派遣法は、大企業で2020年4月から適用されています。

出典:Ⅰ 今回の改正の基本的な考え方|厚生労働省
参照:https://www.jassa.or.jp/admin/info/upload_image/190409_20_hakenhou_kaiseigaiyou.pdf

同一労働同一賃金による派遣社員の導入方法

同一労働同一賃金には、派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の2種類の待遇方式があります。どちらを選択するかは、派遣先と派遣元がお互いの合意の上で取り決めます。

ここでは、派遣先均等・均衡方式と労使協定方式について、詳しく紹介していきます。

派遣先均等・均衡方式

「派遣先均等・均衡方式」では、派遣元の待遇ではなく、派遣先である企業の待遇を採用します。そのため、派遣先が変われば、待遇も変わることになります。

この方式を採用する場合、派遣元は、派遣先の待遇を把握しておく必要があり、派遣先には派遣先の待遇を把握するために、派遣元に対象となる労働者の情報を提供することが義務付けられています。

しかし、このような情報を提供することには時間と労力を要するため「派遣先均等・均衡方式」を採用している企業は少ないのが現状です。

労使協定方式

「労使協定方式」の特徴は、派遣労働者の待遇を、統計数値の基準で決めることです。

統計数値をもとに、派遣先が労働者の待遇を決めるため、「派遣先均等・均衡方式」で義務付けられている、比較対象になる労働者の賃金の待遇などの情報は必要ありません。派遣先は、教育訓練や福利厚生などの情報を派遣元に提供するだけで済みます。

そのため、少ない労力で済ませることができる「労使協定方式」を採用する企業は多い傾向があります。

派遣社員に実施すべき処遇改善4つ

同一労働同一賃金を適用すれば、企業は派遣社員への「不合理な待遇」を改善しなければなりません。

派遣元には、賃金の格差解消のほか、休暇制度・通勤費の支給・教育訓練制度・福利厚生施設の利用など、非正規社員の待遇を正規社員と同じにする義務があります。

以下で、改善すべき各種手当の待遇4つを見ていきましょう。

1:休暇制度

同一労働同一賃金を適用する場合は、有給休暇などの休暇制度について、正規社員と非正規社員を、同等の待遇にする必要があります。

例えば、労働契約している期間内で非正規社員が病気などで休職した場合も、正規社員と同じ待遇にしなければなりません。

また、有期労働契約を更新しているケースでは、有給休暇の扱いは、初めの契約期間から通算した期間が対象になります。

2:通勤費の支給

非正規社員にとって、通勤費の待遇改善は大きなメリットになります。

一般的に、同一労働同一賃金を導入していない企業では、派遣社員の通勤費は時給に含まれるケースが多く見られます。そのため、交通費が高額になる人は、交通費や企業の所在地を考慮して仕事を探す必要があります。

しかし、同一労働同一賃金の適用によって、賃金と別に通勤費が支給されることになれば、非正規社員の負担がなくなり、仕事先を自由に選択できるというメリットが得られます。

3:教育・訓練制度

同一労働同一賃金の適用で、非正規社員と正規社員の業務が同じである場合、企業は業務の生産性や能力の向上を目的とした教育・訓練を実施しなければなりません。

企業が実施する教育・訓練とは、新人教育や業務に必要な基礎訓練、専門的な業務をスキルアップする練習などです。

このような取り組みはコストはかかりますが、業務の生産性や効率化が向上できるでしょう。

4:福利厚生施設の利用

同一労働同一賃金では、福利厚生施設の利用についても、正規社員と非正規社員を同じ待遇にすることが求められます。

具体的には、オフィスの休憩室や更衣室を、非正規社員にも利用できるようにしなければなりません。また、企業が提供する福利厚生施設の社宅や、スポーツ施設なども該当します。

同一労働同一賃金が適用されれば、非正規社員も同じように福利厚生施設を使用できるようになります。

同一労働同一賃金のメリット4つ

労働者にとってのメリットが目立つ同一労働同一賃金ですが、企業にとってもさまざまなメリットがあります。

例えば、労働者の待遇の格差を改善することで会社や仕事に対する不満が減り、生産性の向上に繋げられることが考えられます。

ここからは、同一労働同一賃金を適用することで、企業が得られるメリットについて見ていきましょう。

1:要員の慢性的な不足が解消できる

同一労働同一賃金を適用することで、人材不足の解消が期待できます。

待遇の格差がなくなることで、同じ業務の非正規社員と正規社員は、同等の報酬を得られます。その結果、労働者は納得感をもって仕事に取り組めるため、離職率を下げられる可能性があります。

さらに、離職率が下がることで労働者の定着率が上昇し、人手不足の解消に繋がるでしょう。

また、格差の改善は、子育て中の主婦や、未就労者の労働意欲を高める要因にもなり、企業はそのような人材を確保しやすくなります。

2:派遣社員の能力向上に繋がる

同一労働同一賃金の適用で、社員の能力向上にも繋がります。

同一労働同一賃金によって、非正規社員であっても正規社員と同じく教育・訓練を受けられるため、仕事の知識を増やし、スキルアップすることが可能になります。

その結果、労働者の生産性が向上し、企業の業績アップに繋げられるでしょう。

3:派遣社員にキャリアアップの道が広がる

前述したように、非正規社員であっても、企業は新人教育やスキルアップのための訓練制度を実施しなければなりません。そのため、同じ業務で賃金の待遇に格差がなく、スキルアップできる環境であれば、仕事にやりがいを感じる人は多いでしょう。

仕事にやりがいを感じる労働者は、キャリアアップを目指してスキルを磨いたり、新しい業務に挑戦したりと、企業に貢献してくれます。

つまり、制度の導入によって、企業と労働者の双方が満足できる環境が構築されると言えます。

4:派遣社員のモチベーションアップに繋がる

同一労働同一賃金による待遇の改善で、派遣社員にとっては納得できる賃金制度になり、給料やボーナスに対する満足度も上がります。

賃金の公平性は労働者のモチベーションアップに繋がり、仕事の効率や生産性が向上することが期待できるでしょう。

同一労働同一賃金のデメリット3つ

ここまで、同一労働同一賃金が企業にもたらすメリットを紹介してきました。

企業と労働者の双方にメリットのある同一労働同一賃金ですが、制度の適用によるコストの高騰などの問題があるのも事実です。

ここからは、同一労働同一賃金を導入することのデメリットについて紹介していきます。

1:非正規社員間で待遇差が生じる

同一労働同一賃金は、非正規社員と正規社員の待遇の格差を解消しますが、新たに非正規社員同士の待遇に格差が生まれるという問題が生じます。

例えば、同じ派遣元の非正規社員が、職務の違う部署に配属された場合、同じ派遣元であるのに賃金の格差が生じます。

派遣社員のように業務の内容を自分で選べないケースでは、不満が出る可能性も否定できません。

2:人件費の増加に繋がる

同一労働同一賃金の導入により、非正規社員の多い企業は人件費が高騰する傾向があります。

同一労働同一賃金では、非正規社員と正規社員は同じ待遇になるため、非正規社員の賃金は必然的にアップします。また、制度の導入に伴い教育・訓練制度や休暇制度などの各種手当ての費用もかかります。

そのため、同一労働同一賃金を導入する企業は、人件費の増加が課題になるでしょう。

3:人事制度の見直しに工数がかかる

企業が待遇の格差を改善する場合、人事の評価基準や賃金制度を見直す必要があります。これまでの評価基準や賃金制度では、同一労働同一賃金に対応できないことが理由です。

企業によっては、制度の根本的見直しが必要になることも考えられるため、同一労働同一賃金を適用するには、ある程度の時間と労力が必要になります。

同一賃金同一労働導入時の注意点4つ

同一労働同一賃金の導入には、時間とコスト以外にも、企業は円滑な制度導入のために、十分な準備期間と制度を理解する必要があります。

ここでは、同一労働同一賃金制度の理解を深め、制度を導入する際に気をつけるべきポイントを整理していきます。

1:人件費予算をシビアに定める

同一労働同一賃金を導入する際、人件費の増加が見込まれる企業は、予算をシビアに設定することが重要になります。

制度を導入する際、非正規社員を多く抱えている企業では、人件費の予算オーバーが想定されるからです。

また、正規社員を含め、雇用人数の調整をする必要が出てくる企業もあるでしょう。同一労働同一賃金を導入するときは、人件費の設定をシビアにして予算を決めることが大切です。

2:正社員と非正規社員の業務領域を明確にする

待遇の格差をなくすためには、正規社員と非正規社員、それぞれの業務を明確にする必要があります。

同一労働同一賃金では、同じ業務には同じ報酬を支払う原則があり、行っている業務を明確にしなければ正当な賃金を支払うことができません。

業務を明確にするには、業務を可視化できる体制にするなどの対策が必要です。

3:生産性・効率性の向上を求める

同一労働同一賃金の導入により、人件費は増加する傾向にあります。そのため、導入する際には、業務の生産性・効率性の向上が必要になります

生産性・効率性の向上は、労働者1人1人の働きによるところが大きく、年功序列の制度を成果型の報酬形態などに切り替える企業もあります。年功序列から成果報酬体制に変えることで、待遇の格差改善にも繋がるメリットにできるでしょう。

4:評価制度の見直しをしっかり行う

同一労働同一賃金では、企業が定める評価制度をもとに賃金が決定されます。そのため、企業は従来の評価制度とは異なる、労働者の業務や職務に見合った新しい評価制度を作らなくてはなりません。

雇用形態に関係なく平等な評価軸を作成することで、待遇の格差が解消します。

同一賃金同一労働について正しく理解しよう

同一労働同一賃金を導入する企業は、制度を整備するコストや、人件費が増えることが予想されます。しかし、制度が軌道に乗れば、従業員に対する公平性は保たれたまま生産性や効率性が向上し、業績アップが期待できるなど、企業にメリットの多い制度でしょう。

また、導入する際には対応準備に時間をかけてしっかりとした枠組みを作り、労働環境を見直すことが大切になります。

きちんと対策をしながら、円滑に制度を導入していきましょう。

この記事の監修者・著者

株式会社オープンアップITエンジニア
株式会社オープンアップITエンジニアAWSパートナー/Salesforce認定コンサルティングパートナー 認定企業
ITエンジニア派遣サービス事業を行っています。AWSやSalesforceなど専門領域に特化したITエンジニアが3,000名以上在籍し、常時100名以上のITエンジニアの即日派遣が可能です。

・2021年:AWS Japan Certification Award 2020 ライジングスター of the Year 受賞
・2022年3月:人材サービス型 AWSパートナー認定
・AWS認定資格保有者数1257名(2023年7月3日現在)
・Salesforce認定コンサルティングパートナー
・Salesforce認定資格者295名在籍(2023年7月3日現在)
・LPIC+CCNA 認定資格者:472 名(2022年4月1日時点)
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