準委任契約は派遣契約や請負契約と何が違うの?メリットとデメリットも紹介
準委任契約とは何か?
業務に法律行為がある場合は委任契約、業務が法律行為以外であれば準委任契約となります。 準委任契約とは、特定の業務を遂行することを定めた契約のことで、特定の業務の遂行を目的に締結されます。
準委任契約の場合、業務の内容や成果物に対して完成の義務は負いません。そのため、結果または成果物に不備があったとしても、修正や保証を求められないということなります。
フリーランスエンジニアは一般的には準委任契約になります。準委任契約として専門技術を持っているエンジニアに一定期間、業務に従事してもらうことは仕事を依頼する側にもメリットがあります。
契約形式の特徴
委任契約は、準委任契約と同じく依頼した業務を行う契約です。しかし締結する業務に法律が関わるかどうかで、委任契約、準委任契約か形態が異なります。
民法上は、「法律行為(例:契約の締結や解除)」の委託の場合には委任(民法643条)となり、事実行為の委託の場合に準委任となります。
出典:民法643条|e-GOV 法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
仕事の管理方法の特徴
システム開発における請負契約は、完成日を設定して契約を結びます。一度契約すると、発注側が製作中の納品物に指示を行うことはできません。
そういった観点を踏まえると、請負契約は融通が利かない契約形態といえるでしょう。一方で「業務の遂行」においてだけ契約を結ぶ準委任契約であれば、システム開発の際に仕様変更が発生した場合も、柔軟に対応できます。
派遣契約や請負契約との違い
派遣契約は発注者の指示に従って仕事を進めます。準委任契約は仕事を委任されているため作業者が自由に業務を管理できますが、派遣契約の場合は発注者が業務の管理を行うことになります。
派遣契約の特徴
派遣契約は、労働者を派遣先企業の業務に就業させることを目的とした契約となります。業務における完成責任は負いません。労働者は仕事の指揮命令を派遣元の企業からではなく派遣先から受けます。
つまり、労働者は実施するにあたり、自身が所属する派遣元の企業からではなく派遣先のお客様から指揮命令を受ける形になるのです。
請負契約の特徴
請負契約は、仕事の完成を目的としています。ポイントは仕事を依頼される側が「仕事の完成責任」を負うというところです。
仕事の完成までのプロセスは、仕事を依頼される側によって管理することになります。そのため、仕事を依頼する側としては、仕事を行う実際の労働者に対して仕事における指揮命令はできないことになっています。
準委任契約で雇用するメリット5つ
準委任契約で雇用するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
準委任契約で雇用するメリットは、複数あります。例えば、派遣に比べて期間の制限がない、人数の制限がない、社員を教育するコストがかからない、専門分野をプロに任せられる、一部の行程毎に依頼することができるといった点です。
ここからは、それぞれのメリットについて紹介していきます。
1:派遣契約と比べ期間の制限がない
派遣契約には期間が設定されていますが、準委任契約には期間の制限がなく、決められた仕事内容を実施することを目的としています。
場合によっては、数年や数カ月ではなく、さらに短期間ということもあります。また、業務の進め方や取り組むスケジュールなどが自由に管理でき、時間管理の面で自由度が高いのがメリットです。
2:人数の制限がない
業務に必要な人数を確保しやすいというメリットがあります。
例えば、開発業務で一部のシステムの開発を依頼したいとき、準委任契約であれば人数の制限がないため、業務を実施してくれるエンジニアを効率良く確保できます。
3:社員を教育するコストがかからない
開発業務に最適な専門のエンジニアを効率良く確保できるため、発注元の社員は労働者を教育する必要がありません。
繁忙期に必要なエンジニアを確保したいソフトウェア開発会社は少なくありませんが、準委託契約なら社員を教育するコストがかからないというメリットもあるのです。
4:専門分野をプロに任せられる
発注元は専門分野のプロに業務を任せられるというメリットがあります。
例えば、システムの設計や運営を担うエンジニアと準委任契約を結んだ場合、エンジニアは「技術力を提供すること」を条件に業務を行うことになります。そのため、社内にシステム設計に関する専門スキルを持っている社員がいなくても、システムの設計や運営が可能になります。
5:一部の行程毎に依頼することができる
成果物の納品が不要となっているため、一部の工数が足りない場合にも契約することができます。システムの一部機能作成やテスト業務など、一部の切り取った作業を委任することでスピーディに作業が進み、結果として短期間で報酬に繋げることができるのです。
一部の工程毎に依頼することができるため、なんらかの理由で依頼する側が行えない工程のみや、依頼する側のスキルが足りない部分だけを依頼することもできます。
準委任契約で雇用するデメリット5つ
準委任契約で雇用するデメリットとしては、専門知識を社内に取り入れられない、仕事内容について指揮命令ができない、長期的に専属で依頼できる人材ではない、報酬が安定しない、結果にかかわらず報酬を支払わなければならないといったことが挙げられます。
ここからは、それぞれのデメリットについて紹介していきます。
1:専門知識を社内に取り入れられない
すでに専門技術を持ったエンジニアなどに作業をお願いする形になるため、社内の人材が専門技術を習得することが難しくなる可能性があります。人を育てるには時間が必要ですが、社外の人材に委託することで、専門知識が社内に蓄積できないことが懸念事項といえます。
2:仕事内容について指揮命令ができない
準委任契約は、指揮命令ができません。
一定の期間で定められた業務を行う契約となります。そのため、スケジュールや作業場所など業務の取り組み方の自由度が高くなります。派遣契約とは違って指揮命令はできないため、発注先企業はその点を留意しておく必要があるでしょう。
瑕疵担保責任においても、請負契約では瑕疵担保責任を発生しますが、準委任契約の場合は瑕疵担保責任が発生しません。しかし、準委任契約は「善良な管理者」を持って業務を行う義務があります。
3:長期的に専属で依頼できる人材ではない
一定期間の契約のため、長期的に専属で依頼できる人材ではありません。
そのため、優秀なエンジニアで長期的に専属を依頼したい場合でも、契約上はそのようになっておらず、契約の変更が必要になります。準委任契約を継続する場合は現在の業務を一定期間行う形で依頼することになります。
4:報酬が安定しない
簡単にいうと準委任契約はあくまで作業の一部を手伝うという契約です。製品自体が完成していなくても、作業が終わればそこで契約が終了となります。
エンジニアの業務になるため、特に専門性が高い場合は単価は高くなりがちです。その為、業務を複数依頼した場合など、報酬が高くなってしまうケースもあり、報酬が安定しないことがあります。
5:結果にかかわらず報酬を支払わなければならない
製品自体が完成していなくても、作業を行っているのであれば報酬が発生するため、支払いが必要です。もしあるシステムの納品が終わっていないためにプロジェクトの入金がされていない場合でも、そうした結果にかかわらず報酬を支払う必要があります。
準委任契約で偽装請負をしないための注意事項3つ
準委任契約では、偽装請負と見られるケースが発生してしまうことがあります。知らない間に偽装請負をしているということにならないよう注意しましょう。
具体的な注意事項としては、エンジニアの仕事を直接管理しない、労働条件を直接指定しない、エンジニアの評価や選定をしないなどです。ここからは、この3つ事項について紹介していきます。
1:エンジニアの仕事を直接管理しない
発注者が指揮命令を行うと偽装請負になります。準委任契約の場合、発注者は指揮命令を行えないからです。請負会社にのみ指揮命令の権限があります。
エンジニアと業務に関係のない日常的会話を行うことは問題ありません。しかし、エンジニアの仕事を直接管理すると偽装請負となります。
2:労働条件を直接指定しない
労働条件を直接指定すると偽装請負になります。請負会社にのみ権限があります。
準委任契約は、発注者から指揮命令を行いません。準委任契約といいながら、発注者が業務の細かい指示を労働者に出したり、出退勤・勤務時間の管理を行ったりすると偽装請負になるため注意が必要です。
3:エンジニアの評価や選定をしない
エンジニアの評価や選定を行うと偽装請負になる可能性があります。請負会社にのみ権限があります。
業務を行うエンジニアは仕事を依頼された企業が指揮・管理し、エンジニアの人数やメンバーも仕事を依頼された企業の判断によって選ばれます。そのため、仕事を依頼する企業がエンジニアを評価することや、選定すること、また労働者に業務を割り振る行為は契約上できません。
準委任契約を結ぶ対象の一つにフリーランスエンジニアがある
準委任契約を結んでいる対象として、フリーランスエンジニアがあります。急速にIT化が進み、我々のビジネス環境にも大きな変化がもたらされていますが、その技術を支えているのがエンジニアです。現在エンジニアは、慢性的な人手不足で今後もすぐには解消されそうにありません。
一般企業でもシステムを構築・管理するエンジニアを募集しているところが少なくありません。各企業はフリーランスなどの雇用形態に囚われず、エンジニアを確保したいと考えており、エンジニアの需要は高くなっています。
フリーランスエンジニアのケースとしては、新卒でエンジニアとして活動するケース、IT関係の企業から独立するケースがあります。ケース別にそれぞれのエンジニアが持つ特徴と契約の方法を紹介します。
新卒でエンジニアとして活動するケース
新卒でエンジニアとして活動するケースとしては、独学でフリーランスとして活動し始める、プログラミングスクールから開業する、派遣エンジニアとして実務経験を積んだあと独立するという3つのケースが考えられます。
ここからは、この3つの場合についてそれぞれ紹介していきます。
1:独学でフリーランスとして活動し始める
独学でフリーランスエンジニアとして活動を始めるケースがあります。この場合、独学でプログラミングスキルを学び、企業と業務内容を決め契約するということになります。
最初は、クラウドソーシングなどで見つけた仕事から始めます。単価は高いとはいえませんが未経験でも受注できる簡単なフリーランスの仕事もあり、それをこなしていくことでステップアップしていくことができます。
2:プログラミングスクールから開業する
プログラミングをスクールで学んで、独立する道があります。プログラミングを独学で身につけるのはハードルが高いため、スクールで1から学び最新の情報を身につけることが、結果として一番の近道になるという場合も多いでしょう。
またプログラミングスクールであれば、独立に必要な知識を学ぶことも可能です。フリーランスで働く場合は、プログラミング以外の事務的な作業も発生します。例えば独立に必要な法律や税の知識など、事前に学んでおいて損はないでしょう。
3:派遣エンジニアとして実務経験を積んだ後独立する
派遣エンジニアとして、実務経験を積んだあとに独立します。
いろいろなパターンがありますが、例えば派遣エンジニアとして働いたあとフリーランスエンジニアの準委任契約に変更し、仕事を依頼する企業と継続して業務を行うという形が考えられます。
また、派遣エンジニアの働きが認められ、同じ発注先でフリーランスエンジニアになる場合もあります。
その他のケースとしては、派遣エンジニアからフリーランスエンジニアとして、別の場所で業務につく場合です。この場合は、エンジニアが積極的に仕事を探す必要があります。例えば、クラウドソーシングで仕事を見つけることもできます。
営業力がある方は、自ら企業に営業して業務を獲得することが可能です。フリーランスエンジニアは、自ら業務を探しに行く能力も必要です。
IT関係の企業から独立するケース
IT関係の企業で実務を複数年経験し、フリーランスエンジニアになるケースもあります。
IT関係の企業で実務を複数年経験すると、様々なスキルを獲得することができます。プログラミングの知識から、ツールの使用方法、プロジェクトマネージャーなどの経験があれば、その開発のスキルを他の企業でも活用できることの証明になります。
現在、ITのエンジニアは人手不足です。またAIやARなどの新技術もどんどん出てきており、高単価の案件も増えています。フリーランスエンジニアとして、新しい技術に関連した高単価の業務につくことも可能です。
準委任契約や派遣契約など様々な契約形態の内容を理解し必要に応じて活用しよう
ここまで準委任契約や派遣契約について紹介してきました。どちらか一方の契約がいい悪いということではなく、それぞれの契約には特徴がありメリット、デメリットがあります。業務によって準委任契約の方がいいのか、派遣契約もしくは請負契約がいいのかが変わってきます。
発注側は業務やプロダクトの開発を成功させるのに必要な契約はどれかを検討する必要があります。また、仕事を請けるフリーランス側も、どの業務にどんなメリットがあり、それに対して適切な契約は何かを考える必要があります。
それぞれの契約形態の内容を理解して、うまく活用していきましょう。
この記事の監修者・著者
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ITエンジニア派遣サービス事業を行っています。AWSやSalesforceなど専門領域に特化したITエンジニアが3,000名以上在籍し、常時100名以上のITエンジニアの即日派遣が可能です。
・2021年:AWS Japan Certification Award 2020 ライジングスター of the Year 受賞
・2022年3月:人材サービス型 AWSパートナー認定
・AWS認定資格保有者数1257名(2023年7月3日現在)
・Salesforce認定コンサルティングパートナー
・Salesforce認定資格者295名在籍(2023年7月3日現在)
・LPIC+CCNA 認定資格者:472 名(2022年4月1日時点)
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