AWSのT2とT3の違いとは?用途に合った選択をしよう!
AWS Amazon EC2におけるT2とT3の違いについて
AWSの仮想サーバーであるAmazon EC2には、T2、T3というインスタンスファミリーがあり、さらにインスタンスサイズ(medium、nano、micro、small、large、xlarge、2xlarge)がありますが、一見するとT2とT3はスペックが似通っています。
しかし、ユースケースによる違いや、インスタンスサイズによる細かな違いがあります。
以降でその違いについて説明します。
なお、冒頭の文中にCPUクレジットというAWSの用語が出てきますが、これはCPUを多く使用できるコインのようなもので、CPUクレジットが多ければ多いほど、CPUを長時間使用しつづけることができます。
CPUクレジットに関する詳細は後の章を参照してください。
構成・設定上の違い
T2、T3はそれぞれAWSで想定するユースケースに沿って、ハードウェアを含めたシステムの構成や設定がデザインされています。
この章では構成や設定の違いについて説明します。
ユースケースによる違い
T2、 T3はそれぞれ、想定するユースケースがあり、それに沿ってハードウェアを含むシステムの構成や設定に違いがあります。
T2は、ウェブサイト、ウェブアプリケーション、開発環境、ビルドサーバー、コードリポジトリ、マイクロサービス、テストやステージングの環境、基幹業務アプリケーションといったユースケースを想定して設計されています。
T3は、マイクロサービスや低レイテンシーのインタラクティブアプリケーション・小規模/中規模のデータベースなど仮想デスクトップ、開発環境、コードリポジトリ、およびビジネスクリティカルなアプリケーションといったユースケースを想定して設計されています。
T3はT2よりもクリティカルな性能要件を求められるユースケースを想定して設計されている点が違います。また、T3は一時的に高負荷の処理によってスパイクが発生するような、CPU 使用率が中程度のアプリケーション向けに設計されています。
以上のユースケースを想定しているため、T3はT2よりもCPUの演算性能(FLOPS)を2倍向上させており、AWS Nitro Systemと呼ばれるシステム上に構築してパフォーマンス・可用性・セキュリティを向上させ、さらに仮想化のオーバーヘッドを削減させています。
なお、T3には、T3aという選択肢があります。T3aは、Zenコアを搭載しており、ターボクロック速度で動作できるCPUを搭載していながら、T3より10%低い価格になっています。
CPUクレジットに関する違い
T2、T3では搭載するCPUの違いにより、CPUクレジットの扱いに違いがあります。
T2には、後述する起動クレジットが与えられるため、インスタンスを起動した時からCPUを使用率100%まで使用可能です。
一方、T3には起動クレジットはありませんが、デフォルトの設定であれば、T2と同様に起動時からCPU使用率100%で使用可能です。
この設定は、後述する無制限(unlimited)モードと呼ばれる設定で、オフにすると起動時にCPUが十分に使用できずにパフォーマンスが悪くなる可能性があります。
また、T2はインスタンスを停止するとすぐにCPUクレジットが失われるため、再起動時には起動クレジットしか与えられません。これに対して、T3はインタンス停止後7日間経過するまではクレジットは失われないという違いがあります。
インスタンスのサイズごとの違い
T2、T3には、medium、nano、micro、small、large、xlarge、2xlargeといったインスタンサイズが選べるようになっています。
T2、T3はインスタンスサイズによっても違いがあり、vCPUの数やCPUクレジットに関する違いなどがあります。
nano・micro・smallにおける違い
T2のnano、 micro、 smallはvCPUが1つしか搭載されていませんが、T3は2つ搭載されています。また、T3はCPUクレジットも2倍になっており、CPUをフルに使用できる時間も倍になっています。
コストはT3がT2に比べて、少しだけ高くなります。例えば、smallサイズのWindowsのインスタンスの場合は、1時間あたり0.006USDだけ高くなります。
なお、T2のmicroサイズ(t2.micro)のLinux、 Windowsインスタンスには、1ヶ月間で750時間分まで無料で利用できるAWS無料利用枠が用意されていますが、T3にAWS無料枠はありません。
ただし、AWSの無料枠であっても、無制限(Unlimited)モードをオンにすると、CPU使用率が後述のベースラインを越えた場合に料金が発生することがあるため、注意が必要です。
medium・largeにおける違い
T2、T3のmedium、largeはvCPUの数、CPUクレジットが全く同じですが、T3はT2よりコストが少し安いという違いがあります。
例えば、largeサイズのWindowsのインスタンスの場合は、1時間あたり0.0132USDだけ安くなります。
xlarge・2xlargeにおける違い
T2、T3のxlarge、 2xlargeはvCPUの数は同じですが、T3のほうが得られるCPUクレジットが多くなっており、制限なく使用できる範囲(後述のベースライン)が広いという違いがあります。
CPUクレジットおよび関連する用語について
前章ではCPUクレジットについて簡単に説明しました。この章では、さらに詳しい説明を行い、CPUクレジットやインスタンスに関連するAWSの用語などについて説明します。
ベースラインとは
Amazon EC2インスタンスは、インスタンスタイプごとにvCPU1つあたりの使用率が決められており、これをベースラインの使用率、またはベースラインパフォーマンスと呼びます。
ベースラインが高ければ高いほど、CPUをより長い時間使いつづけることができます。
T系ファミリーとバーストについて
CPUを100%まで稼働できる状態のことをバーストと呼びます。
T系ファミリーのインスタンスはバースト可能パフォーマンスインスタンスと言われ、ベースラインパフォーマンスを超えて最大100%までCPUを稼働できます。
CPUクレジットについて
CPUクレジットは、CPUを使うコインのようなもので、CPUを使うことで消費され、使わないと一定量まで溜まり、最大で24時間分まで溜めることができます。
CPUクレジットが多ければ多いほど、CPUを長い時間にわたって使いつづけることができます。
CPUクレジット”c”は、vCPU数を”v”、使用時間を”m”(分)として、以下の式で表せます。
c=v×m
例えば、2つのvCPUで1分間にわたってCPUを100%で使用する場合、v=2、m=1となり、CPUクレジットc=2となります。
時間あたりにCPUクレジットが溜まる量や、消費する量、蓄積可能な最大量はインスタンスタイプ(T2、T3)とサイズ(small、 largeなど)によって決まっています。
また、CPUクレジットがなくなると、インスタンスが使用できるCPU使用率はvCPU1つにつきベースラインパフォーマンス以下に制限され、動作に十分な性能を発揮できなくなる可能性が出てきます。
例えば、インスタンスタイプ・サイズがt3.largeの場合、vCPUが2つ、ベースラインパフォーマンスが30%のため、CPUクレジットがなくなると、vCPU1つあたりCPU使用率が30%以下、vCPU2つ分トータルで60%以下に制限されます。
CPUクレジットはインスタンスを停止した場合に失われます。
T2はインスタンスを停止してすぐにCPUクレジットが失われますが、T3はインタンス停止後7日間経過したときに失われます。
起動クレジットについて
起動クレジットとは、EC2インスタンスが起動した直後に与えられるCPUクレジットのことです。
T2ファミリーは起動クレジットがあるため、インスタンスの起動時からベースライン使用率を超えてCPUを使用することができます。
これに対して、T3ファミリーには起動クレジットがありませんが、T3ファミリーには後述する無制限モードがあり、結果的にT2ファミリーと同様にインスタンスの起動時から、ベースライン使用率を超えてCPUを使用することができます。
無制限モードと標準モードについて
T2、T3はバースト可能インスタンスと呼ばれますが、バースト可能インスタンスには無制限(unlimited)モードというモードがあります。
これは、CPUクレジットがなくなったときに、24時間先のCPUクレジットを借りるか、もしくは追加料金を支払うことで、CPUクレジットを得るモードです。
無制限モードで得られたCPUクレジットを余剰クレジットと呼び、余剰クレジットはその後に得たCPUクレジットで返済することができます。
余剰CPUクレジットが返済されると、課金が発生しません。
無制限モードをオフにすると、標準モードとなり、CPUクレジットがなくなると、CPU使用率がベースラインの使用率以下に制限されます。CPUがアイドル状態になるとCPUクレジットが溜まるようになります。
まとめ
今回は、AWSの仮想サーバー(Amazon EC2)のT2、T3ファミリーについて、AWSで想定するユースケースによる違い、インスタンスのサイズによる細かな違いについて触れました。
T2、T3インスタンスのどちらを使用するかを決めるときには、ぜひとも参考にしていただき、用途に合った選択をするようにしましょう。
この記事の監修者・著者
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ITエンジニア派遣サービス事業を行っています。AWSやSalesforceなど専門領域に特化したITエンジニアが4,715名在籍し、常時100名以上のITエンジニアの即日派遣が可能です。
・2021年:AWS Japan Certification Award 2020 ライジングスター of the Year 受賞
・2022年3月:人材サービス型 AWSパートナー認定
・AWS認定資格保有者数1,154名(2024年6月現在)
・Salesforce認定コンサルティングパートナー
・Salesforce認定資格者276名在籍(2024年5月現在)
・LPIC+CCNA 認定資格者:472 名(2024年6月時点)
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