AWS様
AWSエンジニアの圧倒的不足解消に期待
ユーザー企業の内製化を人材育成の面から支援
DX推進やクラウド化を背景に、IT業務の内製化が注目されています。しかし、技術は日々進化し、多様化するニーズに対応できるエンジニアは多くありません。クラウドによる顧客の事業発展をパートナーを通じて包括支援しているアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の相澤恵奏氏に、IT内製化の可能性とこれからの人材育成についてお話を伺いました。
プロフィール
相澤 恵奏氏
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
パートナーアライアンス統括本部
テクニカルイネーブルメント部 部長
大和田 敏子氏
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
パートナーアライアンス統括本部
パートナービジネス開発部
※2023年7月1日以前に掲載されている事例は、「株式会社オープンアップITエンジニア」への社名変更前の「株式会社夢テクノロジー」の顧客事例であり、記事上該当社名が記載されています。
DX推進を背景に浮き彫りになる
クラウド対応エンジニアの不足
「実力があり、手を動かせるエンジニアが評価される世界にしたい」。
そう語るのはクラウドサービス「アマゾン ウェブ サービス (AWS) 」を展開するアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(アマゾン ウェブ サービス ジャパン)の相澤恵奏氏だ。
昨今、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を掲げ、IoTやクラウド化等を推進している。しかし、対応できるエンジニアの数は限られており、とりわけAWSを熟知しているエンジニアの圧倒的な不足が課題になっているという。そういった背景から、相澤氏は2017年にパートナーアライアンス統括本部内にテクニカイネーブルメント部を設立し、パートナー企業のエンジニア育成に力を入れている。
「クラウドが登場したことで、システム開発を取り巻く市場構造が大きく変化しています。従来は大手システムインテグレータ(SIer)にコンピュータ導入から相談し、システム構築を一式依頼するのが当たり前でしたが、クラウドならばユーザー企業が自ら導入することができます。自社で作れば効率的ですし、市場全体でエンジニアが不足していても社内人材で案件を進めることができます。DX推進を背景にこうした内製化の機運が高まっているのですが、実はまた別の課題があるのです」
情報処理推進機構(IPA)発行の『IT人材白書2019』)によれば、アメリカはITエンジニアの65.4%がユーザー企業に所属し、ITで何か新しいことに挑戦したいと思えば、自分たちで始めることができる。それに対して、日本ではユーザー企業に所属するエンジニアはわずか25.0%にとどまり、あとの75.0%は大手SIerを含むIT企業に所属している。ユーザー企業としては内製化しようにも社内にエンジニアがおらず、実績がない分どのように採用すればよいのかわからないのが実情だ。
「これまでにIT企業が果たしてきた役割も踏まえると、日本はアメリカのような内製化ではなく、業界全体としてAWS有資格エンジニアを増やすことで、ユーザー企業の内製化を支援する方がよいと考えています」
AWSが分かる人材をどう育てるか
独自教育プログラムに期待
夢テクノロジーがAWSパートナーとなったのは2019年に遡り、夢テクノロジーの社員がアマゾン ウェブ サービス ジャパンの提供する有償のAWSトレーニングを受講したのが始まりだ。その後、夢テクノロジーは社内で『AWS 認定ソリューションアーキテクト(SAA)』を育成できるように独自のカリキュラム開発に乗り出す。開発にあたってはアマゾン ウェブ サービス ジャパンのアライアンス担当者に相談し、トレーニング用マテリアルをチェックしてもらい、レビューをもとに改良を重ねた。
「SAAはさまざまな場面で活躍していただける中級の資格です。夢テクノロジーさんのカリキュラムは資格取得に十分な内容に仕上がりましたし、実際にAWSの様々なサービスを組み合わせて、最適なアーキテクチャを作る、実践力を高められるようなコンテンツが盛り込まれているところも優れていると思いました」
もう一つ、相澤氏が評価した点は夢テクノロジーの担当者の真剣な姿勢だった。
「3年間でAWS有資格エンジニアを1000人育てるという目標を最初に打ち出されたときは驚きましたね。その目標達成に向けて、社長の号令もかかったと聞いています。担当者のモチベーションが高いだけでなく、会社として本気で取り組もうとしておられるのだと感じました」
2019年時点では夢テクノロジー社内のAWS有資格エンジニアはごくわずかだったが、その後、有資格者が一気に増加。アマゾン ウェブ サービス ジャパンでは資格取得者数の伸び率が高い企業に「ライジングスター」という賞を制定しており、夢テクノロジーは2020年に資格保有者数で1,211%という驚異的な数値を記録し、見事ライジングスターに輝いた。一般に伸び率は多くても3ケタ止まりとのことで、相澤氏も「1,000%超えは本当にすごい」と驚きを隠さない。
「夢テクノロジーさんとは、AWS有資格エンジニアを育てて、日本のIT業界の人材不足を変えていきたいという思いを共通しています。実際、ユーザー企業から夢テクノロジーさんのエンジニアが活躍されている様子を耳にすることもあって、さらなる人材の育成に期待しています」
夢テクノロジーでは、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの協力を得て、SAAの次のステップとして、上位のAWS 認定ソリューションアーキテクト プロフェッショナルを目指すトレーニングカリキュラムを用意している。それは2週間に1回、全6回の講義をアマゾン ウェブ サービス ジャパンのパートナーソリューションアーキテクトが自ら講師が担当するというもの。参加者はソリューションアーキテクト プロフェッショナルを取得するという強い思いを持ったエンジニアばかり。夢テクノロジーで育ったSAAのメンバーが次々と参加しており、すでにAWS 認定ソリューションアーキテクト プロフェッショナルとなって次のステージで活躍しはじめている。
夢テクノロジーでは、受託開発もおこなっているが、ソリューションアーキテクト プロフェッショナルメンバーが中心となりSAAメンバーを開発にアサインさせて実務経験を積む取り組みも軌道にのってきた。
「次の取り組みとしては、ソリューションアーキテクト プロフェッショナルメンバーを中心としたチームを編成してユーザー企業の業務を担うチーム派遣を期待しています」
AWSの拡大スピードを考えれば、こういった取り込みは急務となるだろう。
自ら新しい技術を学んで挑戦する
実力あるエンジニアが輝く世界
IT技術の進歩は目覚ましく、エンジニアに求められる知識や技術は日々変化している。
「AWSでは、2020年度の1年間で、2,700を超える新機能が追加されており、その内の90%以上はお客様のリクエストを元に追加された機能になります。常に新しい機能が出てくるAWSにおいて、エンジニアは常に学び続けていくことが求められます。」
さらに、「現在、AWSでは、200を超えるサービスがあります。初めは、全てのサービスを網羅的にやるよりも、SAAの認定試験でよく問われるサービスに注力して学ぶことを、お勧めします。SAA取得後に、さらに自分が注力したいサービスを深く学ぶ、得意領域を作っていくという学び方が良いと思います。最近ですと、コンタクトセンターのサービスである、Amazon Connectや、大量データを分析するAnalytics領域、Amazon RedshiftやAmazon SageMakerなどがお薦めです。加えて、クラウドの登場でインフラ部分の知識だけではなく、より上流への対応、つまりクラウドを使って何をするかという観点が重要になってきています。」
AWSを導入する企業は是非参考にしていただきたい。そういった市場の変化を踏まえて、夢テクノロジーではAWS SAAカリキュラムを筆頭に、さまざまなトレーニングの機会を用意し、人材を育ててから市場に送り出す仕組みを大切にしている。
人材に対する熱い思いはアマゾン ウェブ サービス ジャパンと夢テクノロジーに共通する部分だ。相澤氏の所属する、アマゾン ウェブ サービス ジャパンのパートナーアライアンス統括本部では、ユーザー企業の内製化をAWSパートナーと共に推進していく方針を打ち出している前述のとおり、日本ではエンジニア人材比率に偏りがあり、ユーザー企業の100%内製化は難しいだろう。そこで、アマゾン ウェブ サービス ジャパンでは、すでに、ユーザー企業の内製化を支援しているAWSパートナーと連携して、ユーザー企業の内製化を支援していく日本型の構図を考えている。
「夢テクノロジーさんにはユーザー企業が内製化する際に必要とされるエンジニアの育成のみならず、内製化支援AWSパートナー企業と連携した活動も大いに期待しております。(2021年11月現在、15社)が必要とするエンジニアの育成を大いに期待しています。ほとんどのユーザー企業はこれまでITプロジェクトをSIerに全面委託してきましたが、市場がクラウド化を進めているいまこそ、ITプロジェクトの主導権を取り戻す好機です。ユーザー企業とパートナー企業による共創型、伴走型のビジネスモデルへの転換と言ってもいいでしょう。夢テクノロジーさんもぜひこのビジョンに協力していただき、人材面で大きな役割を果たしていただきたいと思っています」
ユーザー企業が主権を取り戻した先に相澤氏が思い描くのは、時間とコストが嵩む多重の発注体制からの転換であり、実力あるエンジニアが適正に評価される世界だ。志を同じくする企業が手を携えることで、より多くのAWS有資格エンジニアが活躍することを願ってやまない。
取材:ジャーナリスト 林 愛子
※アマゾン ウェブ サービス、およびAWSは、米国および/またはその他の諸国におけるAmazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。